宝の山

山の事を元森林組合作業員が現場案内いたします。植林、間伐、災害、旱魃、水、木の製品について見えるブログにします。

猪口





桧のちょこ

一番左のちょこは塩辛をいれたりウルカをいれたり本わさびをいれる器としても使えます。


ちびちび楽しみたい方に。
豆知識

「エコロジーシンフォニー」から

毎日の買い物がよい世界をつくっていく

 私たち先進国に暮らす人間はほぼ毎日、さまざまなものを買って生活している。野菜や果物、肉に魚、調味料といった食料品をはじめ、トイレットペーパーや洗剤、化粧品など日用品・消耗品、洋服や靴、かばん、アクセサリー等の衣類と雑貨、電化製品や家具などの耐久消費財、自動車や家・マンションといった高額商品ーー。しかし、これらを買うときにその製品が作られた背景まで考えて購買する人は一体どれくらいいるだろう? ほとんどの人は、より安かったり、見栄えがよかったり、ブランド名が安心だからとか、テレビCMに好きなタレントが出演しているからとか・・・きっとそんな理由であなたも選んでいるのではないだろうか。

 しかし、その製品の安さの陰には、実は学校にも行けない貧しい子供たちが暑さの中、信じられないような低賃金で作っていたとしたら・・・? また、おいしいと思って食べているそ食べ物が生産工程で農薬にまみれていて、その農薬を散布するため年間、何万人もの農夫が亡くなっていたとしたら・・・?

 「毎日のお買い物をするときに、ちょっとその背景にまで考えを及ばせてみませんか。あなたのお買い物がもっとよい世界をつくっていくことができるのですよ」ーーそんな問いかけを1988年から行っているのが、アメリカのNPO活動家、アリス・テッパー・マーリーン氏である。


「貧困の連鎖」を断ち切るためにできることは

 アリスは裕福な家庭に育った。実家は、13エーカーにも及ぶ土地を所有し、二人の使用人もいた。何不自由なく少女時代を過ごしたアリスだが、13歳の夏休みにボランティアスタッフとして障害児キャンプに参加したことが、彼女の後の人生に大きく影響することになる。参加していた障害児は、多くの子供達が障害とともに、貧困という二重苦を背負っていた。13歳のアリスは、自分たちの利益を追求するよりも貧困をなくすためにはどうしたらいいかを考えることが、より大きな課題ではないかと考えたという。なんとも早熟で、賢い少女だ。また、貧しい家庭のベビーシッターのアルバイトをした際にも、そういう家庭に育った子供たちがそこから抜け出すことは非常に困難だという「貧困の連鎖」というものを、身を以て経験したという。

 そんな社会的な矛盾や課題を抱えたアリスは、ファイブ・シスターズとして有名なアメリカ名門女子大の一つであるウェルズリー女子大学を卒業後、ニューヨークのウォール街でアナリストとして働いた。当時、女性アナリストはアリスを入れてたった6名という時代だ。そこでアリスは年金基金の運用相談を担当していたが、ある宗教団体の投資担当者の「戦争のための武器をつくっているような会社には、投資しないでほしい」という声に彼女は衝撃を受けたという。当時のアメリカは、ベトナム戦争の最中で、誰もが戦争で一儲けしたやろうという風潮だったのだから。

 しかし、驚いたと同時にこういう人が増えていけば、子供の頃から抱えていた「貧困の連鎖を断ち切るには?」という問題の解決がそこにあるのでは、と感じた。企業の意思決定に影響力を持つ投資家たちが、倫理や社会性といった物差しで投資先を決定していけば、いやが上にもそういった声を企業は無視できない。そこでアリスは自分の顧客たちに、投資対象の企業が社会的倫理的に活動しているかの調査結果を資料として配るようにした。そのとき、ユニークな活動をするアナリストとしてアリスは多くの取材を受け、知名度を上げた。マスコミの力を実感した彼女は、「世論の力を借りれば世の中を変えていける」と確信した。

 その後、1969年の志を同じくする仲間達と「COUNCIL ON ECONOMIC PRIORITIES(CEP)」を設立。これは、企業にとって何を優先すべきか、それは利益なのか、他にもっと大事なことはないのか、その優先順位を考える会、といったものだ。


よい世界をつくっていくのは他でもない消費者自身

 設立から17年後の1986年、CEPは一冊の本を世に送り出した。『RATING AMERICA'S CORPORATE CONSCIENCE』ーーアメリカ企業の良心の格付け。それは、財務内容や経常利益、経営の安定性といったもので格付けされるのが当たり前とされるそれまでの格付けとはまったく一線を画していた。CEPでは、女性や少数民族への待遇や幹部への登用率や、情報公開を行っているか、武器兵器産業との関わりは?といった企業の社会的側面を、在米主要130社について調査分析し、公表したのである。この本は、企業関係者に強烈なインパクトを与えた。しかし、大きなムーブメントが起きるには至らなかった。

 そして、2年後に今度は消費者に向けて『SHOPPING FOR A BETTER WORLD』ーーよりよい世界のための買物を、という小冊子を発行。これは、100万部を越えるベストセラーとなった。新聞や雑誌などで、年間1,500回も取り上げられたという。アリスたちは気づいたのだ。企業を変えようと思っていくら企業にはたらきかけても、いつまでたっても企業は動いてくれない。しかし、消費者からの声を企業は決して無視できないことを。なので、この小冊子は買物にいつでも一緒に連れて行けるように、ハンディなサイズにしてある。そして、消費者自身もこの本を手にしたことで、自身の選択が世界を変えていくことにつながっていることを知ったのだ。

 この『ショッピング・フォー・ベター・ワールド』の中では、格付けを行うために企業の良心を測る7つの姿勢を問うている。7つの姿勢とは

1.情報公開
2.環境や自然への配慮
3.女性の処遇・昇進
4.慈善・寄付
5.労働環境への配慮
6.従業員家族への福利厚生
7.少数民族の処遇・昇進

で、これらについて、ABCDの4段階に格付けしている。しかし、情報公開を行っていないものについては、「E」ではなくいきなり「F」の評価になっている。CEPでは、それだけディスクロージャーは重要と考えているのだ。

 CEPでは、このガイドブックを買った人を調査したところ、5人のうち4人がこの本を読んで買物の仕方や商品の選び方を変えたという。アリスの少女の頃からの願いであった「貧困の連鎖を断ち切る」という理想に、大きな一歩を進めることができた。


グローバル化という怪物に立ち向かう

 しかし、90年代に入ってまたアリスとCEPに大きな脅威がやってきた。それは、東西の冷戦終結による、経済のグローバル化という大きな怪物だ。それまでは、アメリカ国内の法律に立ち向かってきたが、それだけでは立ちいかなくなってしまった。グローバル化により、多国籍企業は次々と安い労働力を求めて、世界各地に進出。コストは下がっていき、私たちはこれまでよりずっと安い値段で、同じような品質の製品を手に入れることができるようになった。

 それと合わせて、通信技術も急速に発達し、インターネットで世界の状況を瞬時に知ることもできるようになった。そして、米国よりももっとひどい貧困が世界に存在することをアリスは知ったのだ。

 こうした中、1997年にSAI(Social Accountability International)を創設。SAIは児童労働や強制労働禁止の認証基準であるSA8000の認証でおなじみであろう。このSA8000は、国連労働条約やILO(国際労働機関)の条約を基準としている。

 こうしたアリスたちの活動の成果のあらわれか、積極的に社会的倫理的な問題の解決に取り組み始めた企業も出てきている。一例を挙げると、ドイツに本拠地を置く通販会社のOTTOは、自分たちの事業活動が及ぼす生態系への影響について言及し、その低減策を打ち出している。また、アパレル大手のGapは、過去には問題も多く、NGO/NPOなどの格好の標的となっていたが、今では労働問題にとりわけ熱心に取り組み、CSRのリーダー的存在となっている。

 アリス・テッパー・マーリーンの挑戦は、今後もまだまだ続くだろう。その挑戦の根っこにあるのは、少女のときに感じた理不尽な思いだ。シンプルでしかも強い子供の理想を、大人になってもずっと持ち続けることの困難さ、そして辛抱強くそれを押し進めた努力とある種の頑固さーーとても上品でもの静かなこの女性のどこにそんな強い力が宿っているのだろうか。

 私たちはアリスのようにはなれないかもしれない。しかし、毎日の買物で世界をよくすることは可能なのだ。それはまた、私たちの良心を試されているのかもしれない。


参考資料:『暮らしの手帖2000年秋/88号〜あなたの買物がよりよい世界をつくる(向社会性研究所/小榑雅章)』
2005.10.25京都ひと・まち交流館で開催された、京都ソーシャルアントレプレナーネットワーク主催の講演会「NPOが社会にインパクトを持つためには――社会起業家マーリーンさんと語る」から

 

(文責:編集部 原田)(エコロジーシンフォニー2005年11/7)

  1. 2007/07/08(日) 06:02:01|
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